先行きが未だ完全に透明なわけではないものの、コロナ後に向けて何をすべきか考え、行動する機運が高まっています。

コロナに翻弄されるなかで多くの新しい考え方が生まれ、試行され、積極的に推進されて、今も続いています。“リモートワーク”、“オンライン授業”、“オンライン会議”、“AIを活用するデータ・ドリブンな商品開発や意思決定”、“副業”、などなど。このほかにも、以前は萌芽に過ぎなかったたくさんの新しい考え方が一気に開花の時を迎えました。

従来は企業でのみ用いられてきた組織や業務管理のコンセプトが、より広い集団に対して明確に求められるようにもなりました。“オープンで双方向のコミュニケーション”や“住民のニーズを聞き取ったうえでの判断”が政治や行政を論じる際に重要なコンセプトとして取り上げられ、“PDCAのサイクルを回す重要性”が従来より強く意識されるようになりました。

ウィズ・コロナ、アフターコロナでは働き方、人と人のつながり方、協働のあり方、社会のあり方が変化し、誰もが大なり小なり変化への対応を迫られています。この変化は誰かが、あるいはいずれかの企業が意図したものではありませんでしたが、まさにチェンジ・マネジメントの局面だといえます。

チェンジ・マネジメントに関して蓄積されてきた膨大な研究や文献は、チェンジ・マネジメントが、制度や装置の導入だけでは成功しないことを示してきました。新部門やチームを創設したり、テレワークや報奨制度の見直しをしたりする、モノや制度、つまりハード面からの働きかけが重要な片輪だとしたら、リーダーシップや人々の考え方や行動など、人、つまりソフト面にも働きかけることで初めて両輪が揃います。

ソフト面への働きかけが不在で変化に対応できない端的な例の一つは、DXの一環としてデータ分析や加工のスキルを習得したスペシャリストを養成したがうまくいかない場合です。現場から集まるデータが適切に収集されておらず、またスペシャリストに対話力が欠けているために現場の悩みを適切にとらえた上での現場への説明や教育もうまくできなくて、両者の関係が悪化するような状況です。

別の事例は、先を見通せない不安感のせいで皆が昔よりも疑い深くなっていて、以前とは違うリーダーシップの発揮が求められているのに、部門やチームのリーダーが様子見ばかりしている。皆の不安を軽減するメッセージを発信していない、または発信する必要を理解していないような状況です。

弊社パートナー、ゼンガー・フォークマン社が行ったグローバルな調査でも、コロナ禍でリーダーに求められるようになった重要なリーダーシップ行動として注目すべき一つに「メンバーの不安感を和らげる」が見つかっています。

チェンジ・マネジメント研究の中で繰り返し指摘されてきたように、変化のプロセスにはもともと困難がつきものです。そのプロセスを可能な限りスムーズに進めるには、優れたリーダーシップや高度なコミュニケーション能力で、人々に働きかけることが重要です。
「自社や自組織で、今、最大の成果を生み出すのはどのようなリーダーシップか?」 
「どのようにコミュニケーションをとれば最大の効果を生み出せるのか?」
多くの皆様とともにこれらの問いの答えを共に探し、組織パフォーマンスをソフト面からサポートする人材開発に邁進してゆきたいと考えています。