子供が成長して大人になっていく過程では、頭の大きさや手足のバランスが大きく変化していくことにお気づきの方は多いでしょう。人間の子供は頭でっかちで重心が上のほうにある危なっかしいバランスですが、成長するにつれて頭が相対的に小さくなり、やがてその人固有のバランスに整っていきます。動物の子供もあるときは手足がぐんぐんと長くなり、別のあるときは胴体が伸びたりしながら、やがて固有のバランスに落ち着きます。

人が社会人としてスタートして、ビジネスパーソンとしてのキャリアを終えるまでの数十年の成長のプロセスも、これに似ています。
成長のプロセスは一様ではなく、ある時期、ある人は、対人関係面や人間性の面で大きく成長します。でも同じ時期にその人の同期生は、人間性の面は荒削りなまま、困難に次々とチャレンジして会社に新しいテクノロジーをもたらすイノベーターとして成長するかもしれません。
キャリアが終盤に近付いても、この二人のスタイルが同一になることはなく、それぞれの特性や強みが持ち味となっているはずです。

企業側から見て重要なのは、それぞれの特性や強みを最大限に活用できているかどうかなので、二人が全く同じスタイルに落ち着く必要はありません。これはダイバーシティのシンプルな(シンプルすぎる?)一側面です。

ところが実際の人材開発の現場では、ついある程度の全員一律を追いかけたくなりがちです。すべての社員や部下を自分の好みのスピードで成長させたくなってしまうのです。そして階層別研修に参加したのに、周囲の期待どおりの成長を見せない部下に対して、弱みを必要以上に指摘して、「今すぐ」改善させようとしたりします。その部下は今手足が伸びているところで、胴体が伸びるのはもっと後かもしれないのに…です。

部下が苦手としている部分が、容認できないレベルなら直す必要があります。でも許容範囲なら、長い目でみる選択肢があっても構いません。
そもそもチーターを泳ぎの名手にする必要はないのですから。