弊社の研修メニューの中にいくつか、ゼンガー・フォークマンという提携企業が開発したものがあります。ゼンガー・フォークマンは数十年のグローバルなデータ収集と研究から、個人やチームのパフォーマンスを向上する方法を見つけ出して、ハーバード・ビジネス・レビュー誌上で反響を呼びました。

研究結果を受けて、弊社の研修でも使用されている、リーダーやマネジャーのパフォーマンスを測定する360度調査が開発されました。研究から得られた発見の一つは、その調査のスコアが飛びきり高まると、経営にとって重要なあらゆる業務パフォーマンスがおよそ2倍に向上することでした。
調査では、エンゲージメントはもちろん、顧客満足度、利益率など、思いつく限りありとあらゆる要素について調査が実施され、すべてにおいてパフォーマンス向上効果が確認されました。

さて弊社に、コロナ以前から研修を実施してくださっているお客様がいらっしゃいます。毎年数回の研修を長年続けてこられて、コロナ禍の数回はオンライン研修となりました。
参加者はどなたも「在宅勤務でコミュニケーションが難しい」と困っておられました。多くの企業と全く変わりありません。

研修後半年近くの間、受講者は職場に戻って自分が立てたパフォーマンス向上のためのアクションプランを実践します。途中何度か皆で集まって軌道修正やアイデア出しや相互の激励をします。ただし、個々の参加者がパフォーマンス向上のために何をするかは、基本的には参加者が決めます。
もちろん方向性を決めるガイダンスはありますが、360度調査の結果を踏まえて、自分が置かれた業務環境のなかで最も効果的に大きな成果を得るべく、完全にパーソナライズされた(個人のニーズに合わせた)アクションプランが作成されます。
ですから同じ研修を受けても、戦略的な思考力の強化に取り組む人がいたり、組織の協働推進に取り組む人がいたりと、個々人の取り組みはバラバラです。

さてコロナ禍ではどんな結果になったのか…?
上述のとおり参加者が取り組む項目は、個人を取り巻く業務の状況に応じてバラバラですから、全員がチームのエンゲージメント向上に取り組むわけではありません。でも部下のモチベーション向上や次世代リーダー選抜を視野に入れたメンバーの能力強化に取り組んだ人もいました。
在宅勤務であるが故の制約で、苦労しなかった人は一人もいません。誰もが、「在宅で難しい、やりにくい。代替案はないものか…」とうめき声をあげ、知恵を絞りながら、ひたむきに走り続けました。

その結果は、素晴らしいものでした。
まず予想通り、「在宅勤務でやりにくい」という悲鳴はトーンダウンしつつも消えることはありませんでした。
一方で多くのポジティブな声が上がりました。
「対面のコミュニケーションの機会が減っても、代替案がたくさん見つかった。」
「テレワークではそれぞれのメンバーと長時間を過ごせない。時間の長さを情報の質で埋め合わせるように心掛けた。効果があったと思う。」
「体系的に情報を共有すること、業務指示において、誰に、なぜ割り振るのか常に考えるようになった。それによって、相手の能力を以前よりも的確に把握できるようになった。」
「オンライン会議でも皆の発言が増えてきた。」
「個々の能力強化やモチベーション向上に効果が表れたと感じている。」

対面のコミュニケーションの便利さを取り戻したい思いは皆、同じですが、在宅勤務だからと言って世界の終わりではないし、リーダーやマネジャーの工夫と努力によってチームのエンゲージメントを高めることができたという心強い結果が得られました。