最近疲労がたまっていることを自覚しているとします。ある日突然、背中に切りつけられるような激痛を感じて、その傷みが止まらないなら、どうしますか。
疲労のせいだろうと考えて、痛み止めを飲みますか。
それとも原因を調べたり、病院に駆けつけたりしますか。
前者はとりあえず痛みという症状を封じておく対症療法のアプローチ、後者は痛みが発生した原因を特定して、根本的な問題を解決するアプローチです。症状が重篤で、将来や周囲への影響が深刻なら、ほとんどの人は根本的な原因を突き止めて、正しい治療をしたいと考えます。あたりまえですが、痛みの原因が何らかの病気なら、対症療法の鎮痛剤では効き目がありません。
ではアフターコロナの人材にまつわる大きな課題の一つ、失われた組織の一体感の場合はどうでしょうか。一体感の喪失は深刻な問題だと危惧されており、加えてコロナ後も一定の割合でリモートワークが定着するだろうと予測されているため、多くの企業や組織が望んでいるのは、冒頭の例で痛み止めを使うような対症療法ではありません。求められるのは根本的な原因解決をする治療です。もちろん原因によっては、根本的な原因解決ができないことがありますから、その場合は最も現実的で効果を上げる治療を選択することになります。だとすれば、次のように一見ロジカルな施策を進める前に、考えるべきことがあります。
【職場の一体感がなくなった】
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【一体感を増すために、一体感が感じられる場を増やそう。
ランチ会や趣味の会や組織横断プロジェクトの拡大だ!】
このアプローチには盲点が隠れています。
そもそも【職場の一体感】は、職場の皆が何かを言ったり行ったりすることを通して生まれた“状態”でしかありません。
この状態を生み出す方法は一つだけです。それは、一体感を生み出す言動をすることです。
ランチ会や組織横断プロジェクトを拡大したとしても、参加者が一体感を生み出す言動をしなければ、一体感は生まれません。もう少し具体的に考えてみます。
例1.コロナ前は上司が皆のことをバランスよく観察していた。だから、評価内容に不公平感が少なかった。そのことが一体感を生み出していた。
例2.コロナ前は業務で困っている仲間に気づいたら、スムーズにフォローしあっていた。フォローする方もされる方も成長感を感じることができて、職場への帰属意識や参加意識が高まった。そのことが一体感を生み出していた。
このように精密に自組織を分析していくと、例1の組織にとって一体感を取り戻すために必要な施策は、上司が皆の仕事ぶりをオンラインの短い会話から正確に把握して、公平感のある対応や育成を実行することであり、そのための施策は上司むけのコミュニケーション研修になるかもしれません。例2の組織では、皆が困りごとを自由にシェアするネット上の場を作ることが解決策かもしれません。
精密に考えた結果、職場の一体感を生み出す言動は、オンラインでも実行可能だと考える組織があっても不思議ではありません。