オンライン研修は珍しいものではなくなりました。その効果について、評価は今のところ定まっていないように見えます。一口に研修と言ってもその内実は実に多様ですから当然です。従来から一方通行に近くてオンデマンド方式に向く研修だったのか、それともディスカッションが不可欠なのかなど、特性の違いに応じた評価が出そろってくるまでは、まだ少し時間がかかりそうです。

私たちスマートワークスで主として行うのは、リーダーシップ、マネジメント、ヒューマンスキルで総称される分野の人材開発です。「行動変容が求められる」「ロールプレイが必要」「他者との議論が重要(他者と自分を比べることで、自己理解が深まる)」という、オンラインにとって三重苦とも言える困難が宿命の分野です。

弊社がやってきたオンライン研修やオンライン・フォロー施策の結果は、コロナ禍におけるたった1年半の経験に関して言えば、総じて良好です。カークパトリックの4段階評価で3番目、行動変化まで追跡しているお客様のところでは、対面研修よりもオンライン研修の効果の方が高くなった実施回も、複数回、ありました。ただし、偶然、向上心が強い受講者が特定の回に集中しただけかもしれませんし、今のところ研修受講者の母集団が大きくありませんので、断定できるほどではありません。

オンライン研修のマイナス面で、あまり話題にされていないことがあります。
それは集団の力学が働かないことです。対面の研修では、最初はやる気なく座っていたが、皆と一緒にいて周囲につられてやってみたら夢中になってしまった、なんていう人が出てきます。集団の力学をうまく活用すれば、より多くの人に効果的に働きかけて学習へのモチベーションを高めることができます。

オンライン研修で集団の力学が働かないとすれば、もともとやる気がない人をうまく巻き込んで、望ましい方向に動機づけることが難しくなります。「え?それって研修効果としては、邪道じゃないの?研修そのものの良し悪しと、関係ないのでは?」とお考えですか。そんなことはありません。実は9割近くの人は、自分の考えに基づくのではなく、周囲に右ならえして、(時には無意識に)自分の行動を決めています。「自分はそうじゃないと思ったけど、誰も発言しないから自分も黙っていた」なんていうのは、右ならえの行動の典型です。

ですから本題ですが、オンライン研修ではこうした集団の力学が働かないため、乗り気でない人をいかに巻き込み、同じゴールに向かっていけるかが、まだ不透明です。
少し大きく長い目でみたときに研修効果が下がってしまうのか、それともフォロー施策の充実によってマイナス面が相殺されていくのか、よく見ていきたいと考えているところです。