方針は何度も伝えている。それなのに、なぜ徹底されないのだろう?

会社として重要な方針を示し、何度も説明している。

内容が難しいわけでもない。本人たちも理解しているように見える。

それなのに、実際の行動を見ると徹底されていない。

安全、品質、コンプライアンスなど、
守ることの重要性について異論がないはずの方針でさえ、こうしたことは起こります。

なぜでしょうか。

まず、方針が徹底されないからといって、方針を理解していないとは限りません。

たとえば、安全を最優先するという会社の方針を、
管理職も社員も十分理解している。

それでも、厳しい納期を守ることを求められれば、
日々の判断では納期が優先されるかもしれません。

上司が結果ばかりを強く求めていれば、
部下は「会社が本当に重視しているのはこちらだ」と受け取ることもあります。

人は、方針として書かれたものだけを見て行動しているわけではありません。

日々のマネジメント
周囲の行動
評価のあり方
仕事の仕組み

など、さまざまなものから「実際には何が求められているのか」を判断しています。

方針が徹底されない状況に直面した上司が
「もっと丁寧に説明しよう」
「管理職から繰り返し伝えよう」
と考えることがあります。

もちろん、本当に理解されていないのであれば、それが必要です。

しかし、すでに十分理解されているなら、
説明を増やしても行動は変わらないかもしれません。

何が行動を妨げているのかを見る必要があります。

仕事の進め方に無理があるのか。
上司の言動が方針と矛盾しているのか。
周囲では別の行動が当たり前になっているのか。
問題を指摘しにくい関係があるのか。

原因によって、必要な対応も変わります。

仕組みや評価制度などに問題があれば、それを変える必要があります。

すべてを研修やコミュニケーションで解決できるわけではありません。

一方で、人と人との関わり方が、
方針と実際の行動のずれを生み出していることもあります。

たとえば、問題が起きるたびに上司が強く叱責する職場では、
本人に悪意がなくても、次第に問題を報告しにくくなることがあります。

また、周囲と違う行動をとることが難しい職場では、
「これは会社の方針と違うのではないか」と気づいても、
口に出せないことがあります。

反対に、誰かが違和感を指摘し、
相手と話し合い、
必要なら周囲を巻き込みながら行動を変えていければ、
問題が大きくなる前に流れを変えられることがあります。

ここでも重要なのは、単に「もっと対話しましょう」ということではありません。

誰と、何について話す必要があるのか。

その相手に、どう働きかければ物事を前に進められるのか。

そこまで考えて初めて、コミュニケーションが組織の行動を変える力になります。

一口に「方針が徹底されない」といっても、原因は一つではありません。

知らないのであれば、伝える必要があります。

理解していても実行する能力がなければ、能力を身につける必要があります。

上司や周囲の言動が妨げているなら、そこへの働きかけが必要です。

仕事の仕組みや評価制度が方針と矛盾しているなら、研修以外の対応も必要になります。

だから、最初から
「方針浸透研修」
「コミュニケーション研修」
と方法を決めてしまう必要はありません。

まず、なぜ方針と実際の行動にずれが生まれているのかを見る。

そのうえで、必要なところに手を打つ。

方針を徹底するために重要なのは、伝える回数を増やすことではなく、
方針が実際の行動になるまでに、何が起きているのかを理解することです。