経験豊富なマネジャーに、いまさらコミュニケーション力の強化が必要なのだろうか?

経験豊富なマネジャーは、日頃から多くの人と仕事をしています。

部下を率い、会議を進め、他部門と調整し、経営層とも話しています。

そうした人に、いまさらコミュニケーション研修が必要なのだろうか。
そう思うのは自然なことです。

実際、日常の仕事が問題なく進んでいるのであれば、
改めて学ぶ必要はないかもしれません。

では、どのようなときにコミュニケーション力の強化が意味を持つのでしょうか。

マネジャーには、組織から与えられた権限があります。

部下に仕事を依頼する。方針を示す。期限を決める。必要な行動を求める。

こうした場面では、役職や権限そのものが大きな力を持っています。

相手が指示に従っている限り、
コミュニケーション上の問題も目立たないかもしれません。

しかし、立場が上がるほど、権限だけでは物事を進められない場面も増えていきます。

他部門との利害が対立している。

専門家が自分とは異なる見解を持っている。

取引先や関係会社に協力してもらう必要がある。

昨日まで競合していた企業と、明日からアライアンスを組むこともあります。

これまで異なる目的や論理で動いてきた人たちが、
相互理解を深め、一つのチームとして成果を出していかなければなりません。

あるいは、自分より上の立場にいる人に、これまでの方針を変えてもらう必要がある。

こうした場面では、

「自分が正しいことを説明する」
「強く指示する」

だけでは十分でないことがあります。

相手が何を考え、何を懸念しているのか。

どこに意見や利害の違いがあるのか。

誰に、何を、どのように働きかければ、物事を前に進められるのか。

そこまで考える必要があります。

コミュニケーションというと、
話し方や聞き方、会話を円滑にする方法
などを思い浮かべるかもしれません。

しかし、仕事で必要になるのはそれだけではありません。

意見の異なる相手と合意をつくる。

対立している部門と協働する。

言いにくい問題を指摘する。

これまで協力する必要がなかった相手と、新しい関係をつくる。

コミュニケーションは、組織の中で人と人が協働し、
物事を前に進めるための方法の一つでもあります。

ところが、現実の仕事では、
決められた会話の手順だけでは対応できないことがあります。

大切なのは、相手と状況を理解し、
誰に、何を、どのように働きかけるかを判断することです。

シニアマネジャーになるほど、
仕事の範囲は自分の部門だけでは完結しなくなります。

異なる専門性や価値観を持つ人、利害の異なる部門、社外の関係者、
そして自分より上位の経営者
とも協働しながら、組織として結果を出すことが求められます。

だから、経験豊富なマネジャー全員にコミュニケーション研修が必要だ、ということではありません。

しかし、
立場や権限だけでは動かせない相手と協働し、
物事を前に進める必要があるなら、
コミュニケーションはシニアになっても強化する価値のある能力です。

そして、その能力はフィードバックやコーチングといった
特定の場面だけでなく、部門間の調整、合意形成、難しい問題の指摘など、
さまざまな場面で活きてきます。