生成AIの急速な普及によって、多くの企業が「AIをどのように業務へ取り入れるか」を模索しています。

文章作成、情報収集、データ分析、企画立案、プログラミング支援など、生成AIは短期間のうちに多くの業務へ浸透しました。AIエージェントを活用した業務改革や、自動化を前提とした業務設計など、これまで構想段階だった取り組みも現実のものとなりつつあります。

こうした変化は、単なる新しいツールの導入ではありません。企業や組織の働き方そのものを変える、大きなチェンジ・マネジメントの局面です。

チェンジ・マネジメントに関して蓄積されてきた膨大な研究や文献は、チェンジ・マネジメントが、制度や装置の導入だけでは成功しないことを示してきました。新部門やチームを創設したり、テレワークや報奨制度の見直しをしたりする、モノや制度、つまりハード面からの働きかけが重要な片輪だとしたら、リーダーシップや人々の考え方や行動など、人、つまりソフト面にも働きかけることで初めて両輪が揃います。

たとえば、生成AIを活用できる専門人材を育成したにもかかわらず、期待した成果が得られないケースがあります。
現場では、
「AIに何を相談すればよいのかわからない」
「出力された内容をどのように業務へ活かせばよいのかわからない」
「AIを使うことに漠然とした不安がある」
といった状況が続き、専門人材も現場との十分な対話ができないまま孤立してしまいます。結果として、AIは導入されたものの、組織全体としては十分に活用されません。原因はAIそのものではなく、人と人とのコミュニケーションや、変化を支援するリーダーシップにある場合が少なくありません。

別の例もあります。生成AIによって仕事の進め方が大きく変わるなかで、多くの人が
「自分の仕事はどう変わるのだろう」
「自分の役割はなくならないだろうか」
「評価はどうなるのだろう」
という不安を抱えています。

そのような時期に、リーダーが様子見を続けたり、十分な情報発信をしなかったりすると、不安はさらに大きくなります。変化が大きい時代ほど、人々は方向性を示してくれるリーダーを求めます。技術を説明するだけではなく、
「なぜこの変化が必要なのか」
「私たちは何を目指しているのか」
「皆でどのように乗り越えていくのか」
を伝え続けることが重要になります。

コロナ禍の前後に、弊社パートナー、ゼンガー・フォークマン社が行ったグローバルな調査でも、コロナ禍でリーダーに求められるようになった重要なリーダーシップ行動として注目すべき一つに「メンバーの不安感を和らげる」が見つかっています。

チェンジ・マネジメント研究の中で繰り返し指摘されてきたように、変化のプロセスにはもともと困難がつきものです。だからこそ、変化をできるだけスムーズに進めるためには、新しい制度や技術だけでなく、人々への働きかけが欠かせません。優れたリーダーシップと質の高いコミュニケーションによって、人々が安心して変化に取り組める環境を整えることが重要です。

生成AIは、今後さらに進化を続けるでしょう。重要なのは、「AIを導入すること」ではありません。AIを活用して成果を生み出せる組織へと、人と組織が変化できるかどうかです。
「今、自社にとって最も大きな成果を生み出すリーダーシップとは何か。」
「AI時代に、どのようなコミュニケーションが人と組織の力を最大限に引き出すのか。」
私たちも、多くの企業の皆様とともに、その答えを探しながら、人と組織の変化を支える人材開発に取り組んでいきたいと考えています。