心理的安全性の重要さは広く認知されています。もともとはグーグルが様々な分野の専門家を集めて行った、生産性の高いチームとそうでないチームの違いを特定するプロジェクトがきっかけとなって、世に知られるようになりました。

心理的安全性を簡単に説明するなら、大きな目標を目指している組織の中で、皆が非難や拒絶される不安を感じることなく、自由に発言できる安心感がある環境です。ただし心理的安全性は「勝手気まま」あるいは「ぬるま湯」の状態とは別物です。心理的安全性の前提は、「大きな目標を目指している」ことだからです。

ところで心理的安全性の権威、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソ博士によれば、『心理的安全性の基本は、信頼と敬意』です。

「心理的安全性」と「信頼」の違いについて博士は、心理的安全性とはチームの風土や関係性を表す言葉、信頼は、個人と個人の関係性を表す言葉だとしています。個人と個人の間の信頼感からスタートして考えると、信頼の欠如が一部の人の問題にとどまらずチームや組織全体の風土になってしまうと、チームや組織全体が信頼の欠如におちいり、心理的安全性のない組織になってしまいます。

ポール・ザックという神経経済学者は、相互信頼の高い文化、低い文化を有する組織を調査しました。そして信頼が高い文化を持つ組織では、有言実行の確率が高く、意見の対立や衝突が長引いて解消されにくく、企業業績の足かせになることを突き止めました。血中のオキシトシン濃度を測定すれば、信頼の高さ・低さを測定できることも発見しました。こうした研究から導き出された結果は次の通りです。

相互信頼が高い組織では、

  • 燃え尽き症候群が40%少ない。
  • 職場の仲間に感じる親しみが66%高い。
  • 生産性が50%高い。
  • 体調不良や病気の日数が13%少ない。
  • 職場での活力が106%高い。
  • 会社方針とのアライメントが70%高い。
  • 信頼が低い組織と比べて給与が17%高い。
  • 人生の満足度が29%高い。

逆に相互信頼が低い組織では、衝突やいさかいや燃え尽き症候群が多く、生産性が低い。病欠が多く、情熱を持てない業務と生産性の低さ、給与の安さを我慢している・・・。こんな状況にいる人は、チームや組織のリーダーやリーダー格を恨み、状況改善の唯一の方法は転職だと感じます。

そのとき、チームや組織のリーダーは、皆からの信頼を得るために何をすればいいのでしょう。

弊社スマートワークスの提携パートナー、米国ゼンガー・フォークマン社は、数十年にわたって蓄積された360度調査のグローバル・データを用いて、信頼の度合いとリーダーシップ、チーム・パフォーマンスの関係を調査しました。
それにより、他者からの信頼は、リーダーシップの効果的な発揮に直接的に影響し、それによってチーム・パフォーマンスが大きく左右されることがデータで証明されました。コミュニケーション、問題解決、率先垂範、戦略的思考、他者のモチベーション向上、変化の推進等、多くのリーダーシップ行動において、他者からの信頼が高い人は、本来の自分の能力をより効果的に活用できていたのです。

最終的にこの調査では、職場のチーム信頼にとってもっとも重要な、次の3つの要素が特定されました。

  1. 業務能力や専門能力。知識があり、経験の広さ、深さに裏付けされた優れた判断力がある。
  2. 一貫性。有言実行すること。また見本となって他者に先例を示している。
  3. 人間関係の醸成。他者の悩み事を理解し、業務上のニーズとプライベートのニーズのバランスに配慮する。

この調査では、膨大なデータの統計調査によって、信頼を醸成するカギとなる要素をさらに具体的に掘り下げています。例えば上記1の「業務能力や専門能力」に関して、高い業務能力と専門能力を今すぐ獲得することが現実的でない場合、その能力を有する専門家に謙虚な姿勢で助言を求めることで、業務能力と専門能力の不足を補完できることがわかっています。

上記の1~3には、それぞれを補完、補強する効果が統計的に確認された多くの行動があります。

調査の詳細は、ゼンガー・フォークマン創業者の一人、計数心理学者のジョー・フォークマン博士が近頃出版したされた書籍にまとめられています。さらにご興味のあるかたはどうぞご覧ください。(英語での出版となっています。Amazonの英語サイトにつながります。)
The Trifecta of Trust: The Proven Formula for Building and Restoring Trust
by Joseph R. Folkman
Amazon: https://www.amazon.com/Trifecta-Trust-Formula-Building-Restoring/dp/163299528X 

心理的安全性、信頼、敬意を築いて結果を出す、トップパフォーマーの行動分析から生まれたコミュニケーション研修、ダイアローグワークスも合わせてご覧ください。