「職場の一体感を高めたい」というご相談を受けることがあります。

では、一体感を高めるために何をすればよいのでしょうか。

社員同士の交流を増やす。
対話の機会をつくる。
チームビルディングを行う。
懇親会やイベントを開く。
どれも役に立つことでしょう。

しかし、「一体感がない」という状態を見て、
すぐにこうした施策を考え始めるのは、少し早いかもしれません。

どこかが痛ければ、痛み止めを飲むことがあります。

それで痛みが消えれば問題ないこともあるでしょう。

しかし、痛みが続いていたり、何度も繰り返したりしているなら、
「どうすれば痛みを感じなくなるか」だけでなく、「なぜ痛いのか」を調べる必要があります。

組織の問題も、これと少し似ています。

「一体感がない」は、問題の原因ではなく、現在の組織に現れている状態かもしれません。

だとすれば、最初に考えたいのは、
この職場では、何が起きているから一体感がないのだろう?
ということです。

たとえば、以前は一体感があったという職場なら、そのころと今では何が違うのでしょうか。

「以前は助け合っていた」
「情報共有ができていた」
「チーム全体に関心を持っていた」

といった答えが出てくるかもしれません。

ただし、ここでもう一段注意が必要です。

「助け合っていた」「関心を持っていた」という言葉も、
人によって意味するものが違います。

ある人が「助け合っている」と感じる職場を、
別の人はそう感じないかもしれません。

「情報共有ができている」という言葉から思い浮かべる状態も、人によって違います。

組織の問題を考えるためには、
こうした言葉をそのまま原因として扱うのではなく、
人によって解釈がぶれないくらいまで、
実際に何が起きていたのかを具体的に捉える必要があります。

そこまで見えてくると、
「一体感があったころ」と「今」の違いも、
漠然とした印象ではなくなってきます。

そして次に考えるのが、

なぜ、その違いが生まれたのか。

ということです。

仕事量が増えて、人を助ける余裕がなくなったのかもしれません。

組織変更によって、それぞれの目標が分断されたのかもしれません。

情報を共有するよりも、自分の成果を優先するほうが合理的な環境になっているのかもしれません。

意見を言うことで嫌な思いをする経験が重なり、次第に誰も口を出さなくなったのかもしれません。

原因が違えば、必要な対応も当然違います。

これは「一体感」に限った話ではありません。

「エンゲージメントが低い」
「心理的安全性がない」
「部門間の連携が悪い」
「管理職が機能していない」

こうした言葉は、組織で起きていることを捉えるうえで便利です。

しかし、それ自体が原因を説明しているとは限りません。

たとえば、エンゲージメントが低いからエンゲージメント向上施策を行う、
心理的安全性が低いから心理的安全性の研修を行う、
と考える前に、その組織では実際に何が起きているのかを見てみる必要があります。

同じ「エンゲージメントが低い組織」でも、
その状態を生み出しているものは会社によって違うからです。

組織を変えようとするときには、望ましい状態を描くことが必要です。

ただし、
「一体感のある職場にしたい」
だけでは、まだ何を変えればよいのかはわかりません。

一体感のある職場では、実際には何が起きているのか。

今は何が起きているのか。

その違いはどこから生まれているのか。

そして、どこを変えれば、望ましい状態に近づくのか。

ここまで考えて初めて、

研修が必要なのか、
マネジャーの行動を変える必要があるのか、
仕事の仕組みを見直す必要があるのか、
あるいは別の方法が必要なのか

が見えてきます。

研修やワークショップは、そのための一つの方法です。最初から答えとは限りません。

目の前に見えている問題と、本当に変えるべきものは、同じとは限らないからです。