心理的安全性という言葉が、職場で広く使われるようになりました。
心理的安全性を研究してきたハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授は、
グループ内のメンバーの関係性に信頼と敬意があれば、
心理的安全性につながりやすいと説明しています。
では、「信頼」は、仕事や組織にどのような影響を与えるのでしょうか。
信頼の高い職場では、何が違うのか
神経経済学者のポール・ザックは、組織における信頼について研究しています。
その研究では、信頼の高い組織で働く人は、信頼の低い組織で働く人に比べて、
- 生産性が50%高い
- 仕事上の活力が106%高い
- エンゲージメントが76%高い
- 燃え尽きが40%少ない
- 病欠が13%少ない
- 人生の満足度が29%高い
といった違いが報告されています。
信頼というと、人間関係が良い、安心して働ける、
といったことを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それも大切です。
しかし、こうしたデータを見ると、
信頼は人間関係の心地よさだけではなく、
人が仕事で力を発揮することとも関係している
ことがわかります。
では、チームや組織のリーダーは、
周囲からの信頼を得るために何をすればよいのでしょうか。
信頼されるリーダーに共通する3つの要素
弊社パートナー、ゼンガー・フォークマン社は、
数十年にわたって蓄積してきたグローバルな360度フィードバックの
大規模データを使って、リーダーに対する信頼について分析しています。
その研究から、
信頼されるリーダーにとって重要な3つの要素が特定されました。
1.業務能力と優れた判断力
仕事に必要な知識や専門性を持ち、経験に裏づけられた適切な判断ができること。
2.一貫性
言っていることと行動が一致していること。約束したことを実行し、自ら模範となること。
3.人間関係を築く力
相手の状況や懸念を理解し、相手を大切に扱い、良好な関係を築くこと。
ゼンガー・フォークマン社は、この3つを Trifecta of Trust と呼んでいます。
興味深いのは、単に「この3つが大切です」で研究が終わっていないことです。
「足りない能力があるなら、もう信頼されない」わけではない
たとえば、1つ目の「業務能力と優れた判断力」。
リーダーになったからといって、
あらゆる分野について高い専門性を持てるわけではありません。
では、自分に専門知識が足りなければ、信頼されるリーダーにはなれないのでしょうか。
ゼンガー・フォークマン社の分析では、そう単純ではありません。
自分が知らないことを認め、その分野に詳しい人に助言を求める。
専門家の知識を尊重し、それを自分の判断に活かす。
こうした行動によって、自分自身の専門能力の不足を補うことができます。
同じように、3つの要素には、それぞれを補強するさまざまな行動があります。
つまり、信頼は単に
「この人は誠実そうだ」
「人柄がいい」といった
漠然としたものだけではありません。
周囲から信頼されるために、リーダーが実際にできることがある。
ここが、この研究の面白いところです。
信頼を、データから考える
この研究をさらに詳しく知りたい方は、
弊社パートナー、ゼンガー・フォークマン社の創業者の一人であり、
計数心理学者でもあるジョー・フォークマン博士の著書をご覧ください。
(英語での出版です。)
The Trifecta of Trust: The Proven Formula for Building and Restoring Trust
Joseph R. Folkman
信頼という、一見すると測りにくく、捉えどころのないものを、
大規模な360度フィードバック・データから分析し、
リーダーが実際にどのような行動をとればよいのかまで掘り下げた本です。
心理的安全性について考えるとき、
「信頼が大切です」で終わってしまえば、
信頼はどこか捉えどころのないもののままです。
けれど、信頼を構成するものを具体的に見ていくと、
私たちが実際に変えられるものが見えてきます。
信頼は、感じるものであり、築いていくものでもあります。