シニア管理職向けの研修で、
説得力や対人影響力を高めるコミュニケーションについて話していたときのことです。

衝撃波に撃たれたかのようなオドロキの表情とともに、こんな反応が返ってきました。

「そんなことまでしてあげないとダメなのか?」

相手の感情をくんだり、
共感を伝えたり、
細かな言葉づかいに
気を配ったりする必要が、
なぜあるのか。

「自分は、上司からそんな話し方はされなかったぞ」

ごもっとも。でも、しないとダメです。

もちろん、ちゃんと理由があります。

管理職の方から、

「自分たちの頃は、そこまで言われなくてもやった」
「上司はそんなに気をつかってくれなかった」
「それくらい、自分で考えるものではないのか」

という話を聞くことがあります。

確かに、その方自身はそれで仕事をしてきたのでしょう。

ただ、ここで一つ考えておきたいことがあります。

自分に効果があった働きかけが、目の前の相手にも同じように効果があるとは限りません。

育ってきた社会も、
職場で経験してきたことも、
上司と部下の関係についての考え方も、
人によって違います。

さらに、職場そのものも変わっています。

かつてより働く人の価値観やキャリア観は多様になり、
上司と部下の関係も、
「上司が言ったことを部下が実行する」という関係だけでは捉えにくくなっています。

だからといって、昔のコミュニケーションが間違っていて、
今のコミュニケーションが正しい、という話ではありません。

また、相手に何でも合わせればよいわけでもありません。

仕事では、相手に理解してもらいたいことがあります。
納得して動いてもらわなければならないこともあります。
ときには、相手が聞きたくないことを伝える必要もあります。

そのとき大切なのは、

「自分なら、これで分かる」
ではなく、「この相手には、どう伝えれば届くのか」

を考えることです。

相手の反応を見ながら、伝え方を変える。
必要なら相手の考えを聞く。
何が伝わっていないのかを確かめる。
それでも必要なことは、きちんと伝える。

これは相手を甘やかすこととは違います。

相手に影響を与えたいからこそ、相手に届く方法を選ぶ。

自分がかつて上司からどう扱われたかは、興味深い参考資料ではあります。

でも、目の前の相手への取扱説明書ではありません。