研修ではよく理解している。それなのに、なぜ職場では行動が変わらないのだろう?

研修中はよく理解していた。本人も「実践したい」と話していた。

ところが数か月後、職場を見ると、それほど行動が変わっていない。

研修では珍しくないことです。

こうした「知っていること」と「実際に行動すること」の間にある隔たりは、
Knowing-Doing Gap(ノーイング・ドゥーイング・ギャップ)と呼ばれています。

このギャップはなぜ生まれるのでしょうか。

理由は一つではありません。まず、基本的なところから考えてみます。

まず考えたいのは、理解することと、実際にできることは同じではないということです。

たとえば、フィードバックの進め方を学び、「なるほど」と理解したとします。
しかし実際には、相手の反応を見ながら言葉を選び、
予想外の反応にも対応しながら会話を進めなくてはなりません。

方法を理解していることと、実際の場面で使えることは同じではありません。

これはコミュニケーションに限りません。
問題分析でも、リーダーシップでも、
知識として理解したことを実際の状況で使えるようになるには、
練習や実践が必要です。

Knowing-Doing Gapが生まれる理由は、知識やスキルの不足だけではありません。

十分なスキルを持っていても、職場でその行動が実行されるとは限りません。

たとえば、部下へのフィードバックの方法を身につけた人がいたとします。

忙しくて話す時間がないかもしれません。
上司が部下育成に関心を持っていないかもしれません。
新しいやり方を試して失敗することを、本人が恐れていることもあります。

反対に、上司が本人の成長に期待し、
新しい能力を試す仕事を与えたり、
取り組みについて定期的に話したりすれば、
行動を後押しする力になります。

人の行動は、本人の知識や能力だけで決まるわけではありません。

だから、研修だけを見ても行動変容するかどうかわからない

研修後に「よく理解できた」「役に立った」という回答が多ければ、
研修として一つの成果ではあります。

しかし、それだけで職場での行動が変わったとは言えません。

私たちが重視しているのは、

実際に何をしたか。
周囲から見て行動が変わったか。
その結果、職場に何が起きたか。

です。

そのため、必要に応じて
研修後の実践、上司との対話、コーチング、フォローアップなどを組み合わせます。

すべての研修に大がかりな仕組みが必要なわけではありません。
本人が学んだことをすぐに実践できる環境なら、
研修だけで十分なこともあります。

大切なのは、研修を増やすことではなく、何が行動を変えるのかを考えることです。

研修後に行動が変わらないと、「もっと研修が必要なのではないか」と考えたくなることがあります。

しかし、本人はすでに十分理解し、能力も身につけているかもしれません。

問題が、実践する機会にあることもあります。

上司や周囲との関係にあることもあります。
仕事の仕組みや、本人に期待されていることとの矛盾にあるかもしれません。

そうであれば、同じ内容をもう一度教えても、問題は解決しません。

研修は、人の行動を変えるために使える方法の一つです。

だからこそ私たちは、研修から考えるのではなく、
「どのような行動を変えたいのか」
「その行動を妨げているものは何か」
から考えることを大切にしています。