職場でも、一人ひとりの違いを尊重することが、以前より重視されるようになりました。

性別や年齢、国籍といった違いだけではありません。
働き方、キャリアについての考え方、仕事で大切にしたいことなど、
人によってさまざまな違いがあります。

こうした違いを、優劣ではなく一人ひとりの違いとして尊重することは大切です。

では、多様性が尊重される職場では、
どのようなマネジメントが必要になるのでしょうか。

多様性を尊重する職場とは、

意見や価値観の異なるメンバーの見解が尊重され、
議論の俎上に載り、
検討される

職場でもあります。

多様な人や意見があれば、それだけ異なる見解が出てきます。
意見がぶつかることもあれば、
合意に至るまでに扱わなければならないことも増えていきます。

多様性を尊重することは、違いをなくすことではありません。
違いがある状態で、一緒に仕事をすることです。

違いを尊重することを、
「相手を否定せず、その意見を受け入れること」
と捉えることがあります。

もちろん、最初から自分の考えを押しつけたり、
相手の意見を聞かなかったりしては、多様な考えを活かすことはできません。

しかし、
相手の意見を尊重することと、
その意見に同意したり、受け入れたりすることは同じではありません。

仕事であれば、

「その考えには賛成できない」
「それではこの仕事は成立しない」
「ここは変えてほしい」
「この点については、あなたに改善してもらう必要がある」

と伝えなければならないこともあります。

異なる意見を聞く。
その背景にある考えを理解する。
自分の考えも伝える。
必要ならフィードバックする。
意見の違いについて話し合う。
そして、どこかで判断し、仕事を前に進める。

多様性が高まるほど、マネジャーにはこうした複数のことを
同時に扱うコミュニケーションが求められます。

日本の職場では長い間、
上位者が自分の意向を明確に伝え、
部下がそれを理解し、実行することが、
マネジャーのコミュニケーションの重要な役割の一つでした。

もちろん、部下の話をよく聞き、異なる意見を尊重してきたマネジャーもたくさんいます。

それでも、ある程度共通した価値観や働き方を前提として、
「何をしてほしいのかを、明確に伝える」ことに
大きな比重が置かれてきたのは確かでしょう。

多様な人たちと働くとき、それだけでは足りません。

相手によって、持っている経験も、価値観も、仕事への期待も違います。
マネジャーが自分の考えを伝えれば、そのまま受け入れられるとは限りません。

相手の考えを引き出し、理解する。
違いがどこにあるのかを捉える。
自分の考えや、組織として譲れないことも伝える。
相手の反応を受けて、さらに話す。
必要ならフィードバックする。
それでも違いが残れば、どこで合意し、どこで判断するのかを考える。

「伝える」ことから、「違いを扱いながら物事を前に進める」ことへ。

マネジャーに求められるコミュニケーションは、より複雑になっています。

多様性のある組織をつくることと、
その多様性を活かして仕事をすることは、同じではありません。

さまざまな意見を安心して言えることは大切です。

しかし、出てきた異なる意見をただ並べておくだけでは、
組織としての判断にはなりません。

違いを尊重しながら、
必要なことは率直に伝え、
異なる意見を扱い、
合意や判断につなげていく。

多様性が広がるほど、こうしたコミュニケーション力は、
マネジャーにとってますます重要になっていきます。