職場で、こんな言葉を聞いたことはありませんか。
「リーダーシップは、立場によって求められるものが違うからね」
一見もっともらしく聞こえます。でも、本当にそうでしょうか。管理職や人材育成に関わる人の中にも、こう考える人は少なくありません。私は、この考えが組織の人づくりを静かに歪めている面があると思っています。
混ざっているのは「マネジメント」と「リーダーシップ」
マネジメントは、組織から与えられた「権限」に基づく仕事です。新入社員には部下も予算もありませんが、課長には人事評価権や予算執行権があり、経営層には全社戦略の決定権があります。権限が違うのだから、できること・すべきことが階層ごとに変わるのは当然です。
一方、リーダーシップは「他者に影響を与え、行動を促せるか」という、個人の力と姿勢の問題です。
・自分の持ち場で、あるべき姿を語れる
・指示を待たず、課題を見つけて動く
・誠実さで信頼を得る
・相手の話を本気で聴く
・権限がなくても、人を巻き込む
・不確実でも判断し、責任を引き受ける
これらは、新入社員にも部長にも同じように求められます。
「職位で変える」という発想が招く4つの問題
1. 若手の主体性が摘まれる
「リーダーシップは役職がついてから」と考えると、「まだ早い」「出しゃばるな」という空気が生まれます。改善提案をした新人を「立派なリーダーシップ」と評価する組織と、黙らせる組織。5年後に差がつくのは明らかです。
2. 役職者が権限に頼るようになる
「部長になったから、部長のリーダーシップを発揮する」という発想は、「役職=影響力」という誤解につながります。指示を出すだけで誰もついてこない部長は、マネジメントの権限はあっても、リーダーシップは発揮できていません。
3. 育成が遅れる
リーダーシップを学ぶ機会を「管理職になってから」に置くと、土台となる力を磨く機会が10年以上先送りされます。管理職になって初めて「人がついてこない」と気づいても、手遅れになりかねません。
4. 評価や登用の基準が歪む
職位ごとにリーダーシップの定義を変えてしまうと、「今の役職にふさわしい振る舞いができているか」が評価の軸になります。役職がないために、実際には周囲に影響を与えている人が見えなくなります。
身につけ方にも違いがある
マネジメントは「型」や制度の知識が土台なので、研修やマニュアルで一定水準まで身につきます。リーダーシップは、知っているだけでは発揮できません。人との関わりの中での経験を通じて、行動特性(コンピテンシー)として内面化される必要があります。
(もちろん、マネジメントにも対人面の力は、必要ですし、リーダーシップにも業界知識などの土台は必要です。あくまで依存度の違いです)
だからこそ、階層別の研修だけでは足りません。リーダーシップは、早い段階から、経験の場とセットで育てる必要があります。
誤解のないように
階層が上がれば、リーダーシップを発揮する場面や視座は変わります。担当業務から、チーム、組織全体へ。影響を与える範囲も、背負う責任も大きくなります。
ただし変わるのは「発揮する舞台」であって、土台となるコンピテンシーそのものではありません。ここを混同していないでしょうか。
あなたの組織に、問いかけたいこと
・リーダーシップを学ぶ機会は、管理職になってから始まっていませんか
・「リーダーシップがある人」と聞いて、役職者の顔しか浮かびませんか
・若手の提案や巻き込みを、「まだ早い」で片づけていませんか
・自分自身も、「役職がないから」と動くのをためらっていませんか
一つでも当てはまるなら、リーダーシップと役職を結びつけている枠組みを見直す時期かもしれません。
あなたの組織では、新入社員や若手社員のリーダーシップを、どう育てていますか。