仕事で必要になるスキルの中には、若手のころから必要だけれど、
キャリアが進み、責任や役割が大きくなるほど、発揮するのが難しくなるものがあります。

たとえば、「倫理や正義に基づいて行動する」ということを考えてみましょう。

若手社員なら、その意味するところは、
自分のミスに気づいたとき、自分にとって不利になるとわかっていても、
きちんと報告することかもしれません。

マネジャーなら、自分とは意見が合わない部下にも、
公平に成長や昇進の機会を与えることかもしれません。

巨大企業を率いるCEOなら、
会社に巨額の損失が生じ、大きな批判を受けるとわかっていても、
自社製品の重大な問題を公表し、必要な対応を取ることかもしれません。

どの人にも求められているのは、「倫理や正義に基づいて行動する」という同じスキルです。

しかし、役割や責任が大きくなるにつれて、
その判断の難しさも、
行動が周囲に与えるインパクトも大きくなっていきます。

これは、コミュニケーションや意思決定、戦略的に考える力など、
仕事で必要になる多くのスキルについても同じです。

責任が大きくなるほど、扱う問題は複雑になり、関係する人も増え、
ひとつの判断が与える影響も大きくなります。

では、より大きな責任に見合うスキルを、どうやって身につけるのでしょうか。

特別に意外な答えがあるわけではありません。

エベレストに登るときは、一歩ずつ。

実際の仕事の中で使い、経験を積んでいくことです。

長い間、上司の顔色を見て、上司が喜びそうなことだけを発言し、
自分で考えたり決めたりする経験をほとんどしてこなかった人が、
役職が上がった途端、
難しい状況できっぱりと意思決定できるようになる、と期待するのは少し無理があります。

大きな責任を担うときに必要になるスキルだからこそ、
それより前から、実際の仕事の中で使う経験を積んでおく必要があります。

ただし、何かを意識しながら仕事をしていれば、それだけでスキルが高まるとは限りません。

たとえば、

「相手を思いやる」

という行動目標を立てたとします。

悪い目標ではありません。
しかし、「相手を思いやる」という言葉には、さまざまな行動が含まれています。

「あなたはどう思いますか」と意見を聞くことかもしれません。
忙しそうな相手にねぎらいの言葉をかけることかもしれません。
必要な情報を相手が理解しやすい形で伝えることかもしれません。

「相手を思いやろう」と思っていても、
実際の仕事の場面で何をするのかが曖昧なままでは、
必要な瞬間に行動できないことがあります。

あとになって、

「ああ、あのとき、あれを言えばよかった」

と思い出す。

そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

スキルを高めるには、実際の仕事の中で繰り返し使うことが必要です。
そして練習する行動は、必要な場面で実際に使えるくらいには具体的であることも大切です。

役職が上がれば、同じスキルでも、求められるレベルは上がっていきます。

そのときになって突然できるようになるわけではありません。
今いる場所で使えるところから、経験を積んでいくことが大切です。