
自律は「任せる」だけでは生まれない
― 同じ会社の中で、人とつながり、問い、試し、学ぶ
前回は、Microsoftを制度やCEOの言葉ではなく、社員が実際に何をしているのかという視点から見ました。
HackathonやGarageで見えてきたのは、社員が自分の担当業務の範囲だけにとどまらず、必要に応じて社内の違うチーム、違う専門分野
の人に声をかけ、一緒にアイデアを試している姿でした。
Xbox Adaptive ControllerやSeeing AIの事例からも、
気づく。
人に声をかける。
一緒に考える。
試す。
学ぶ。
やり直す。
という行動が見えてきます。
では、なぜMicrosoftでは、こうした行動が生まれるのでしょうか。
今回は、そこをDashとPeemoで考えてみます。
Dash (Akira Chida)
SmartWorks / HLS Global Case Research
― 企業の仕事の仕方を問い、そこからリーダーシップや人材育成への意味を考える。
Peemo (AI Research Partner)
― 公開情報を調べ、社員の行動や組織の仕組みに見られるパターンを整理し、Dashとともに仮説を考える。
自ら動くのは「その人が優秀だから」なのか
Dash (Akira Chida):
Peemo、Microsoftの事例を見ていて気になることがある。
Xbox Adaptive ControllerもSeeing AIも、最初から誰かが完成した答えを持っていたわけではないよね。
Peemo (AI Research Partner):
そうですね。
最初にあったのは、
「何か問題がある」
「もっと良くできないか」
「自分たちに何かできないか」
という気づきや問いでした。
そして、自分一人で解決しようとするのではなく、必要な知識や経験を持つ人を社内で探しています。
Dash:
そこが大事なんだと思う。
自律的に働くというと、つい、
「一人で考えて、一人で行動できる人」
というイメージになりやすい。
でもMicrosoftから見えてくるのは、むしろ反対だね。
自分だけで抱え込まず、必要な人とつながれることも自律の一部なのではないか。
特別な「社外体験」でなくてもいい
Peemo:
Microsoftの事例で興味深いのは、社員が必ずしも会社の外へ出ているわけではないことです。
多くの場合、
自分のチームから、
別のチームへ。
自分の専門から、
違う専門の人へ。
自分の知っている人から、
まだ一緒に仕事をしたことのない人へ。
会社の中でつながりを広げています。
Dash:
ここは、日本企業にとってかなり重要な示唆だと思う。
人材育成というと、何か特別な経験をさせようとして、
数日間別の会社で働いてみる。
普段と全く違う環境へ送り出す。
という大がかりな方法を考えることもある。
もちろん、そうした経験にも意味はある。
でも、もっと身近なところから始められるんじゃないかな。
同じ会社の中にも、自分が知らない人、知らない仕事、知らない専門性がたくさんある。
まずそこにつながるだけでも、仕事の見え方はかなり変わる。
Peemo:
つまり、
「会社を出なければ視野は広がらない」わけではない。
ということですね。
Dash:
そう。
たとえば営業の人が技術の人に聞く。
研究の人が顧客対応をしている人に聞く。
若手社員が別部門のベテランに聞く。
本社の人が工場の人に聞く。
それだけでも、今まで自分が持っていなかった情報や視点に触れることができる。
Smart Workを考えるなら、まずは社内で人と人がつながりやすい仕事の仕方をつくることが重要なんじゃないかと思う。
「問い」が人と人をつなぐ
Peemo:
ここで、もう一つ重要なのが「問い」ですね。
知らない人に声をかけるには、何か聞きたいことが必要です。
「この問題をどう見ますか?」
「この分野について教えてもらえませんか?」
「このアイデアを一緒に試せませんか?」
問いが、人と人をつなぐきっかけになります。
Dash:
これはNVIDIAを調べたときにも考えたことだね。
私たちは、
問いは、社員をリーダーにするのではなく、
一人ひとりのリーダーシップ行動を引き出す触媒になるのではないか
という仮説を立てた。
Microsoftを見ていると、その仮説がもう少し具体的に見えてくる。
問いを持つ。
人に聞く。
違う考え方に触れる。
一緒に試す。
こうして仕事が動き始める。
マネージャーも「答えを教える人」だけではない
Peemo:
そう考えると、マネージャーの役割も変わりますね。
すべての答えを持っている必要はありません。
社員自身が考えたり、必要な人とつながったりできるように支援することも重要になります。
Dash:
つまり、
「私が答えを教える」
だけではなく、
「誰に聞けばいいと思う?」
「他のチームはどう考えているだろう?」
「まず小さく試すとしたら何ができる?」
と問いかける。
これがコーチング型マネジメントにつながっていく。
HRテーマを「社員の行動」に戻して考える
Peemo:
Microsoftの社員行動を見ていくと、現在のHRで重視されているテーマともつながります。
心理的安全性
自律的成長
社内の異なるチームとの協働
Learning Agility
コーチング型マネジメント
次世代リーダー育成
Dash:
ただ、こうした言葉を掲げるだけでは十分ではないと思う。
たとえば、
「心理的安全性を高めよう」
と言う前に、
分からないときに「分からない」と言えるか。
「自律型人材を育てよう」
と言う前に、
自分から必要な人に声をかけられるか。
「部門間連携を強化しよう」
と言う前に、
普段一緒に仕事をしていないチームの人に相談できるか。
「Learning Agilityを高めよう」
と言う前に、
まず試して、うまくいかなかったら変えられるか。
こうして、HRの言葉を日常の具体的な行動に戻して考えることが重要なんじゃないかな。
SmartWorksの今回のInsight
Peemo:
では、今回のMicrosoftからのInsightを一つにまとめると、どうなりますか?
Dash:
私は、こう考えている。
自律的な社員を育てるために、必ずしも特別な環境へ送り出す必要はない。
同じ会社の中で、普段一緒に仕事をしていない人とつながり、問い、試し、学ぶ。
その小さな行動を日常の仕事の中で繰り返せることが、Smart Workの出発点になるのではないか。
Peemo:
つまり、組織の中には、すでに多くの人材、知識、経験がある。
問題は、それらがつながっているかどうかなのかもしれませんね。
Dash:
そうだと思う。
だから私は、Microsoftから学ぶべきなのは、単にHackathonという制度ではないと思っている。
もっと根本にある、
「必要なら、別のチームの人に聞いてみる。」
「面白いアイデアなら、一緒に試してみる。」
「うまくいかなければ、学んで変える。」
そんな当たり前に見える行動が、日常の仕事の中でできること。
そこに、MicrosoftのSmart Workの一つの本質があるのではないか。
制度を見る前に、仕事の仕方を見る
MicrosoftがSmartWorksのPQA、DialogueWORKS、Zenger Folkmanのプログラムを採用しているという意味ではありません。
今回の記事は、Microsoftの公開情報を、SmartWorksがこれまで培ってきた質問・対話・リーダーシップ開発の知見と照らし合わせて考察したものです。
私たちはこれからも、NVIDIA、Microsoft、そして世界のさまざまな企業を比較しながら、
人が自ら考え、周囲とつながり、リーダーシップ行動を発揮できるHuman Leadership Systemとは何か。
を考えていきます。
Akira Chida / Dash
SmartWorks
HLS Global Case Research
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