Netflixは、社員1人当たり約282万ドル(約4億2,300万円)の売上を生み出しています。
その社員は、指示を待つのではなく、自ら判断し、あえて反対意見を集め、決定したら行動し、結果から学びます。
高い生産性を生み出す企業では、社員は仕事にどう取り組み、どう進めているのでしょうか。
Netflixの具体的な社員行動から、日本企業の「仕事の仕方」を考えます。

日本人の製品をつくる力は世界トップクラス
それなのに、なぜ一人ひとりの労働生産性は世界トップクラスにならないのか

私は長年、この問題に関心を持ち続けてきました。

「日本人の生産性を世界一にするための支援をしたい。」

これがHLS(Human Leadership System)ジャーナルの原点にあります。

そこで世界の企業に目を向け、高い成果を生み出している企業では、社員が仕事にどのように取り組み、どのように仕事を進め、それがどのような「仕事の仕方」として現れているのかを調べています。

今回取り上げるNetflixは、2025年に約16,000人の正社員で約451.8億ドル(約6兆7,770億円)の売上を生み出しました。社員1人当たりでは約282万ドル(約4億2,300万円)。米国企業の中でも非常に高い水準です。

もちろん、デジタルビジネスであるNetflixと日本企業を数字だけで単純比較することはできません。

だからこそ知りたいのです。

「高い一人当たり売上を生み出している企業では、社員は仕事にどう取り組み、どう進めているのか?」

今回、Peemoが公開情報からNetflix社員の行動を調べ、Dashが飛びぬけたリーダー(The Extraordinary Leader™)、ダイアローグワークス(DialogueWORKS)、精密な質問と回答(PQA)の視点も交えながら、その特徴を考えていきます。

ここで、この記事で使う3つの言葉を整理しておきます。

「仕事への取り組み方」は、仕事に向き合う姿勢やマインドセットです。主体性、当事者意識、目的意識、責任感などが含まれます。

「仕事の進め方」は、それを具体的な行動にするプロセスやスキルです。情報収集、優先順位付け、コミュニケーション、意思決定、実行、振り返りなどが含まれます。

そして「仕事の仕方」は、この二つが実際の仕事の中で一体となって現れる実践スタイルとして捉えます。

Netflixを制度やCultureだけで説明するのではなく、この3つの視点から社員の具体的な行動を見ていきます。

Netflixを「生産性」という視点から見る

Dash:
Peemo、今回はNetflixの社員が、仕事にどう取り組み、実際にどう進めているのかを調べてみよう。

私が長く考えてきたのは、日本人の能力そのものが低いわけではないのに、なぜ一人当たりの生産性では世界トップクラスにならないのか、という問題なんだ。

設備やITだけでなく、「人がどのように仕事に取り組み、進めているか」にも、生産性を高める可能性があるのではないか。

そこを世界の企業から探してみたい。

Peemo:
その視点でNetflixを見ると、興味深い数字があります。

2025年の売上高は約451.8億ドル(約6兆7,770億円)、純利益は約109.8億ドル(約1兆6,470億円)。

正社員は約16,000人です。

単純計算すると、社員1人当たり売上は約282万ドル(約4億2,300万円)になります。

Dash:
一人で約4億2,300万円。

もちろん、その数字だけで社員の能力を評価することはできないね。

コンテンツ、テクノロジー、ビジネスモデル、グローバル展開など、さまざまな要因がある。

だからHLSで見たいのは数字そのものではない。

「そこで働く社員は、仕事にどう取り組み、どう進めているのか?」

ここだね。

仕事への取り組み方① 「指示を待つ」から「自分で判断する」へ

Peemo:
Netflix自身が公開しているCulture Memoを調べると、社員に期待する姿勢と行動がかなり具体的に示されています。

Netflixの4つの基本原則の一つが、
People Over Process(プロセスより人を重視する)
です。

Netflixは、社員が自分の仕事について判断できるだけの情報と自由を持つことで、より大きなImpactを生み出せると考えています。

Dash:
ここで重要なのは、「Processはいらない」という意味ではないことだね。
ルールを増やせば生産性が上がるとは限らない。
逆に、すべてを社員任せにすればいいわけでもない。

最初に問いたいのは、
「社員は、自分が仕事の当事者であるという意識を持っているか」
ということだと思う。

指示されたことを正確に実行するだけなのか。
それとも、目的を理解し、自分が何をすべきかを考えようとしているのか。

これは「仕事への取り組み方」の違いだね。

Peemo:
そして、その取り組み方を実際の行動につなげるために、Netflixはマネジャーにも特徴的な役割を求めています。
Context not Control(管理ではなく、判断に必要な背景・状況を共有する)
です。

上司が「これをしなさい」と一つひとつControlするのではなく、社員が自分で判断できるよう、必要なContextとClarity(明確さ)を提供します。

Dash:
これは日本で言われている「自律型人材」を考えるうえでも重要だね。

自律型人材を育てたいと言いながら、上司が考え、上司が判断し、部下には実行だけを求めていたら、社員が判断する力はなかなか育たない。

飛びぬけたリーダーの観点から見ても、自分で状況を理解し、判断し、結果に責任を持って行動することは重要だ。

仕事への取り組み方を変えるだけで終わらず、それを実際の「仕事の進め方」へつなげる必要がある。

仕事の進め方② 自分の意見を通すのではなく、反対意見を探す

Peemo:
そこでNetflixの特徴がさらに明確になります。

Netflixでは重要な意思決定について、
Informed Captain(十分な情報を得た意思決定責任者)
を置きます。

委員会で全員の合意を取って決めるのではなく、最終的には一人が判断します。

しかし、その人が独断で決めるわけではありません。

Informed Captainには、自分と異なる意見を積極的に探し、さまざまな階層の社員から意見を聞くことが求められています。

Netflixはこれを、
Farming for Dissent(意図的に反対意見を集めること)
と呼んでいます。

Dash:
ここは「仕事の進め方」として非常に興味深い。

「自分で判断する」という取り組み方を、独断にしないための具体的なプロセスがある。

自分とは違う意見を聞く。
問いかける。
相手がなぜそう考えるのかを理解する。
自分自身の前提も確認する。
そのうえで自分が判断する。

これはDialogueWORKS(ダイアローグワークス)との接点も大きい。

Dialogueは、みんなを同じ意見にすることではない。
違いをなくすのではなく、違いを使って理解と判断の質を高める。

Netflixでは、「反対意見を言ってもよい」という受け身の状態ではなく、意思決定する本人が反対意見を探しに行く。

これはかなり具体的な「仕事の進め方」だと思う。

仕事の進め方③ 答えを急ぐ前に、問題を問い直す

Dash:
反対意見を聞くことは、PQA(精密な質問と回答)の考え方ともつながるね。

自分が考えている解決策について、
「この答えでいいのか?」
と考えるだけではない。

その前に、
「そもそも、自分は正しい問題を見ているのか?」
と問い直す。

異なる意見や情報が入ってくれば、自分が当然だと思っていた問題設定そのものが変わる可能性がある。

これも「仕事の進め方」の質に関わってくる。

Peemo:
Netflixは2024年にCulture Memoを改訂した際にも、社員から広く意見を集めました。

全社員に意見を求め、約12カ月をかけて1,500件以上のコメントを集め、その多くを新しいCulture Memoに反映しました。

Dash:
ここはHLSジャーナルで大切にしたいところだね。

「会社が何を言っているか」だけではなく、
「実際に社員が何をしているか」
を見る。

自分と異なる意見を求めるという考え方が、具体的な行動として確認できるところに意味がある。

仕事の進め方④ 決めたら実行し、結果から学ぶ

Peemo:
そして、反対意見を出した後にも特徴があります。

Informed Captainが最終判断をした後は、自分が別の意見を持っていた社員も、その決定を成功させるために協力します。

さらに結果が見えてきたら、
何がうまくいったのか。
何がうまくいかなかったのか。
を振り返り、次の判断に生かします。

Dash:
これで「自律」の意味がかなり具体的になるね。

主体性や当事者意識を持つ。
必要な情報を得る。
人に聞く。
異なる意見を集める。
問い直す。
自分で判断する。
実行する。
結果から学ぶ。

前半は「仕事への取り組み方」、後半はそれを具体化した「仕事の進め方」と見ることができる。

そして、それらが日常業務の中で繰り返されることで、その人や組織の「仕事の仕方」になっていくのだと思う。

日本の生産性を考えるとき、何を見るのか

日本の労働生産性が国際的に低いという問題は、現在も続いています。

日本生産性本部によれば、2024年の日本の就業者1人当たり労働生産性は98,344ドル(約1,475万円)で、OECD加盟38カ国中29位。時間当たりでは28位です。

一方、製造業の労働生産性はOECD加盟主要35カ国中20位でした。

Dash:
だから私が考え続けてきた問題は、今も残っている。

設備を改善する。
ITを導入する。
業務プロセスを効率化する。

もちろん、それらも重要だ。

でも、人そのものに目を向けると、もう一つ研究したい領域がある。

社員が仕事にどのような姿勢で向き合うのか。
そして、
どう情報を得るか。
どう問いを立てるか。
誰と話すか。
どう判断するか。
どう行動するか。
どう学ぶか。

つまり「仕事への取り組み方」と「仕事の進め方」だ。

それらが変われば、一人ひとりの「仕事の仕方」も変わる。

そこにも生産性を高める大きな可能性があるのではないかと考えている。

Peemo:
そう考えると、Netflixの社員1人当たり約282万ドル(約4億2,300万円)という数字は、結論ではなく研究の入口ですね。

Dash:
その通り。

「Netflixのやり方を日本企業も導入しましょう」という話ではない。

HLS Global Case Researchで知りたいのは、
「高い生産性を生み出している世界の企業では、社員は仕事にどう取り組み、どう進めているのか?」

そして、
「企業や業界が違っても、そこに共通するものはあるのか?」

ということなんだ。

世界の企業から「仕事の仕方」を探る

HLSジャーナルの目的は、成功企業を紹介することだけではありません。

世界の企業で社員が実際にどのような姿勢で仕事に向き合い、どのように考え、判断し、行動しているのか。

Peemoが公開情報からEvidenceを集め、Dashがその意味を分析する。

そして、一つの企業の成功事例をそのまま日本企業へ当てはめるのではなく、企業や業界を越えて何が見えてくるのかを考えていきます。

今回Netflixから見えてきたものを3つの視点で整理すると、より明確になります。

「仕事への取り組み方」
指示を待つのではなく、目的を理解し、自分自身が判断する当事者として仕事に向き合う。

「仕事の進め方」
必要な情報を集める。異なる意見を自ら求める。問いかける。問題そのものを見直す。自分で判断する。実行し、結果から学ぶ。

「仕事の仕方」
こうした取り組み方と進め方が一体となり、日常の意思決定や社員同士の関係、マネジャーと社員の関係に現れる。

Netflixから見えてきたのは、単純な「自由」ではありませんでした。

むしろ、自由を成果につなげるための、社員の「仕事への取り組み方」と「仕事の進め方」です。

Netflixの高い生産性と、こうした社員行動にはどのような関係があるのでしょうか。

次回のInsightでは、People Over ProcessやContext not Controlという考え方の紹介からさらに一歩進み、Netflix社員の「仕事への取り組み方」と「仕事の進め方」を、Talent Development(人材開発)、Leadership(リーダーシップ)、DialogueWORKS(ダイアローグワークス)、PQA(精密な質問と回答)の視点から分析します。

そこから、日本企業が一人ひとりの生産性と仕事の質を高めるために、「仕事の仕方」をどう考えていけばよいのか、そのヒントを探します。

Akira Chida / Dash
SmartWorks
HLS Global Case Research