価値観や利害関係、ものの見方が真っ向から対立している相手との会話は、
理論や知識を持っていても難しいものです。
身近なところでいえば、夫婦で子育ての方針が違う。
指示を待つことの多い若手に、仕事の進め方についてフィードバックしたい。
あるいは、上司や、ときにはさらに上層の経営陣に反対意見を伝えなければならない。
相手や状況によっては、言い方を間違えると関係を損ねたり、
その後の仕事を難しくしたりすることもあります。
「そんなこと、言えるわけがない」
以前、こうした難しい会話について研修で扱うと、
興味深い反応がよくありました。
若手や部下など、自分より下位の人に異論を伝えることは考えられる。
ところが、同僚や上司、さらに上位の人となると、
「そんなことを言うなんて、あり得ない」
「それは無理でしょう」
と、話し方を考えるより前に、
結論が決まっているように見えることがありました。
ところが最近、研修で中堅社員の方々と話していると、
少し違う反応に出会うことがあります。
「上司に反対意見を言いたいのですが、どう話せばいいでしょう」
「もっと上の人に伝えなければならない場合は?」
「こういう相手には、どうすればいいですか?」
自分から具体的な場面を持ち出して、熱心に質問してくださいます。
こちらが「なかなか難しい会話ですね。まずは十分に練習してから試してください」
と言うと、真面目にうなずいています。
相手との上下関係から考えるか、実現したいことから考えるか
この違いは、なかなか興味深いと思います。
「自分より上の人だから言えない」
「部下だから言ってよい」
と、相手との上下関係を起点に自分の行動を決めるのではない。
まず、
自分は何を実現したいのか。
を考える。
このままでは問題が起きると思うなら、
相手が上司であっても、その問題をどう伝えるかを考える。
相手に行動を変えてほしいなら、
自分の立場を利用して言うことを聞かせるのではなく、
どう働きかければ本当に行動が変わるのかを考える。
もちろん、何でも言えばよいわけではありません。
相手との関係や立場、タイミング、伝え方によって、結果は大きく変わります。
だからこそ、
コミュニケーションの手順や構成を組み立てる知識とスキルが必要になります。
でも、出発点は「この相手に、こんなことを言ってよいのだろうか」だけではありません。
実現したい結果は何か。
そのために、この相手に何を働きかける必要があるのか。
そして、自分はどう行動するのか。
コミュニケーションをこの順番で考える。
これは、結果志向で戦略的なコミュニケーションの一例です。