腱鞘炎になりました。
治療を受けたものの、ほどなく再発。日常生活にもかなり支障が出ています。
自由に動くのは頭と口くらいなので、
せっかくなら普段仕事で使っている分析的な思考の方法を使って、
次に何をすればよいのか考えてみることにしました。
もちろん、自分で診断するためではありません。
今わかっていることは何か。
わかっていないことは何か。
次に何を確認する必要があるのか。
それを整理するためです。
腱鞘炎について、考えてみる
Q:ここまでの治療と経過は?
A:一般的な治療を1回受けた。痛みと炎症を抑える注射だったが、
2週間以内に再発し、治療前と同じ程度の症状が出ている。
Q:そもそも、腱鞘炎の原因は何だと考えている?
A:炎症を起こした部位の使いすぎだと理解している。
Q:それは医師から説明されたことか。それとも自分の理解か?
A:自分の理解がかなり入っている。ここは確認したほうがよさそうだ。
Q:「使いすぎ」とは、具体的には何を指しているのか?
A:自分は、関節を曲げ伸ばしする頻度のことだと考えていた。
Q:では、その動作は避けられなかったのか?
A:いや、意識すればかなり減らせたと思う。
Q:だとすると、治療だけを繰り返しても、体の使い方が同じなら
再発する可能性について考える必要はないか?
A: たしかに、これは確認したほうがよさそうだ。
Q:ところで、今ある痛みはすべて同じ場所にあるのか?
A:そうではない。もともとの患部以外にも、上半身の右側にかなり強い痛みがある。
Q:それをすべて「腱鞘炎に伴う痛み」と考えてよい根拠はある?
A:ない。そう思い込んでいただけかもしれない。
Q:では、次に医療機関で確認すべきことは何か?
A:再発への対処だけでなく、患部以外の痛みについても伝え、
原因や必要な対応を確認したほうがよさそうだ。
こうして並べてみると、
最初に考えていた「腱鞘炎が再発した。次はどう治療しよう」という問題から、
少し景色が変わってきます。
治療法を探す前に、確認しなければならないことがいくつもありました。
質問することが目的ではない
上のやり取りを見ると、たんに次々と
質問しているだけのように見えるかもしれません。
しかし、質問すること自体が目的ではありません。
何がわかっているのか。何がわかっていないのか。
事実だと思っていることは、本当に確認された事実なのか。
どんな前提を置いて考えているのか。
ほかに検討すべき点はないのか。
それらを確かめながら思考を前に進めるために、質問が使われています。
こうして考えていくと、
見落としていた重要な論点や、
情報が足りないところ、
知らないうちに当然のこととしていた前提
などが見つかります。
もちろん、この方法を使えば必ず正しい答えが出るわけではありません。
しかし重要な論点の見落としや、情報不足、曖昧な前提、
根拠の弱さなどに気づきやすくなるので、
判断の質が高まります。
よく考えることと、長く考えることは同じではない
もう一つ重要なのが、思考の効率です。
何か問題が起きると、
ああでもない、こうでもないと何日も考えたり、
何を探しているのかも曖昧なまま、
ネットで何時間も検索したりすることがあります。
とはいえ、長く考えれば、よく考えたことになるとは限りません。
だからと言って思考の効率を求めて、むやみに答えを急げばいいわけでもありません。
重要なのは、
考えなくてもよいところを行ったり来たりせず、
考えるべきところに早くたどり着くこと。
考えるべきところを見極めながら思考を進めることで、
質と効率の両方を高めることができます。
仕事では、もっと複雑になる
これは腱鞘炎について一人で考えるためだけの話ではありません。
仕事では、
問題を解決する、
いくつかの選択肢から一つを選ぶ、
上司や顧客に提案する、
重要な意思決定をする、
といったことが日常的に起こります。
しかも、必要な情報を一人の人がすべて持っているとは限りません。
会議や問題解決、提案や意思決定でも、
何がわかっていて何がわかっていないのか、
どこに情報が足りないのかを早く明らかにできれば、
議論の質と効率も変わります。
「なんで、これに気づかなかったのだろう!」
と後になって嘆く可能性も、少し減らせるかもしれません。
でも、今ならAIに聞けば早い?
そう思う方もいるかもしれません。
確かにAIを使えば、
情報を集めたり、選択肢を出したり、考えを整理したりする時間は大幅に短くできます。
しかし、AIが速く答えを出してくれることと、
よい判断に早くたどり着くことは、同じではありません。
何を問題として考えるのか。
何を確かめる必要があるのか。
AIが出した情報のどこを確認するのか。
何を根拠に最終的な判断をするのか。
こうしたことは残ります。
むしろ、情報を得るスピードが上がるほど、考える側の思考の質が重要になります。
AIは、考えるための強力な道具です。
だからこそ、その道具を使う側にも、何を考え、何を確かめ、
どう判断するかという力が必要になります。
思考の質と効率を、両方高める
ここで使ったのは、弊社が提供している
Precision Questioning and Answering(PQA) の考え方です。
PQAは、上手な質問をするためだけの方法ではありません。
情報や考えを分析し、重要なポイントを見極めながら、
限られた時間の中で思考や判断を前に進めるための方法論です。
深く考えることと、速く考えることを、どちらか一方にしない。
思考や判断の質を高めながら、考えるプロセスそのものも効率的にする。
腱鞘炎から重要な経営判断まで、扱う問題の大きさはずいぶん違いますが、
考えるときに必要なことには、意外と共通するものがあります。