AIによるイノベーションを加速するために、社員にAIを使えるようになってもらおう。
そんな取り組みが、多くの企業で進んでいます。
AIを仕事で使うスキルを身につけることは、もちろん重要です。
でも、皆がAIを使えるようになれば、それだけでイノベーションが生まれるのでしょうか。
イノベーションやDXは、
専門知識や技術を持った人を集めれば実現する、というものではありません。
優れた技術を持つ人がいても、
新しい考えを受け入れない組織では、イノベーションは起こりにくいでしょう。
DXでも、技術を導入するだけでは、
仕事の仕方や意思決定まで変わるとは限りません。
この話は、米国のゼンガー・フォークマン社と一緒に
リーダーシップ開発に取り組んでいるSmartWorksにとって、とても興味深いものです。
ゼンガー・フォークマンの研究では、
リーダーが持つ強みを際立ったレベルまで伸ばすとき、
その強みと一見関係がなさそうな別の能力を伸ばすことが
有効な場合があることがわかっています。
ここでいうリーダーシップは、経営者や管理職だけのものではありません。
役職がなくても、その立場で周囲によい影響を与える行動はできます。
「問題解決と課題分析」が得意な人を、さらに伸ばすには?
たとえば、「問題解決と課題分析」を強みとするAさんを想像してみます。
Aさんは論理的に考えることが得意で、分析力や数値を理解する力にも優れている。
多くの人は、「問題解決と課題分析」をさらに伸ばすなら、
こうした能力をもっと磨けばよいと考えるのではないでしょうか。
もちろん、それも間違いではありません。
ところが、「問題解決と課題分析」をそこそこ得意なレベルから、
際立った強みにまで引き上げようとすると、
少し面白いことが起こります。
ゼンガー・フォークマンが蓄積してきたデータを分析すると、
組み合わせることでこの強みをさらに高める能力がいくつも見つかります。
その中には、
率先して行動することや
コミュニケーションなど、
「問題解決と課題分析」とは一見あまり関係がなさそうなものも含まれています。
考えてみれば、優れた分析ができても、
それを周囲に伝えられなければ、組織の行動にはつながりません。
問題を正確に捉えることができても、
自分から動かなければ、問題は解決しません。
一つの能力だけを取り出して伸ばしていけば、
どこまでも高い成果につながるとは限らないわけです。
専門性だけでは、成果にならないことがある
これは、イノベーションやDX、そして現在のAI活用にも少し似ています。
AIを仕事で使うための知識やスキルを身につけることは、もちろん重要です。
しかし、AIを使える人が増えれば、それだけで
組織の成果が大きくなるとは限りません。
新しいアイデアを周囲が受け入れない。
部門を越えて必要な情報が共有されない。
これまでの仕事の仕方を変えようとしない。
専門家とそれ以外の人たちの間で十分なコミュニケーションができない。
そんな組織では、優れた専門性があっても、それを十分に活かすことは難しいでしょう。
専門性そのものを高めることと、
その専門性を使って組織として成果を生み出すことは、
同じではありません。
ゼンガー・フォークマンのリーダーシップ研究を見ていても、
イノベーションやDX、AI活用について考えていても、
同じようなところに行き着きます。
大きな成果を生み出すのは、一つの優れた能力ではなく、能力の組み合わせのようです。